「野菜から食べる子」は心も強くなる? ―ベジファーストと自己肯定感をつなぐ最新研究
2026/08/14
「野菜から食べる子」は心も強くなる?
―ベジファーストと自己肯定感をつなぐ最新研究
「野菜から先に食べると、血糖値が上がりにくい」
いわゆるベジファーストについて、このような話を聞いたことがある方は多いと思います。
これまでは、血糖値や肥満予防など「身体」に対するメリットが注目されることが多かったベジファースト。
ところが2026年、日本の子どもたちを長期間追跡した研究から、とても興味深い結果が報告されました。
それは、
「小学生の頃から野菜を最初に食べる習慣を続けている子どもは、自己肯定感やレジリエンスが高い傾向にある」
というものです。
食べるものだけではなく、「食べる順番」が子どもの心と関連しているかもしれない。
身体調律という視点から考えても、とても興味深い研究です。
今日はPILATES STUDIO R-zoneの2つ星栄養コンシェルジュでもあるオーナー渡部が考える
身体調律からのベジファーストについて記載いたします。
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約2,600人の子どもを6年間追跡したA-CHILD研究
この研究は、東京科学大学の藤原武男教授、ユパー・キン特任助教らの研究チームによって行われ、2026年3月に国際医学誌『Pediatric Research』に発表されました。
研究名は、
「Association between eating vegetables first at the meal and mental capital: A-CHILD study」
です。
東京都足立区で行われている「Adachi Child Health Impact of Living Difficulty(A-CHILD)研究」のデータを使用し、2,654人の子どもを小学1年生から小学6年生まで追跡しています。
研究では、子どもたちを「野菜を最初に食べる習慣」の変化によって4つのグループに分類しました。
・野菜から食べないグループ
・途中から野菜から食べるようになったグループ
・途中から野菜から食べなくなったグループ
・小学1年生から6年生まで継続して野菜から食べていたグループ
そして6年生時点で、
レジリエンス=困難から立ち直る力
そして、
自己肯定感
を評価しました。
結果は非常に興味深いものでした。
小学1年生から6年生まで継続して野菜から食べていた子どもは、野菜から食べる習慣がなかった子どもと比較して、レジリエンスと自己肯定感の両方が有意に高かったのです。
自己肯定感では効果量d=0.27、レジリエンスではd=0.20という差が認められています。
「野菜を食べれば自己肯定感が上がる」ではありません
ここで、一つ注意しなければならないことがあります。
この研究から、
「野菜を最初に食べれば、自己肯定感が上がる」
と断定することはできません。
今回の研究は、食習慣と心の状態との関連性を調べたものだからです。
つまり、
ベジファースト
↓
自己肯定感アップ
という因果関係が証明されたわけではありません。
研究論文自体も、ベジファーストがどのような仕組みで子どもの「mental capital(心の資本・心の力)」と関係するのかについて、さらなる研究が必要だとしています。
では、なぜこのような関連が生まれるのでしょうか。
ここからが非常に面白いところです。
仮説①
食べる順番と「血糖値」
ベジファーストが注目されてきた理由の一つが、食後血糖の変動です。
ご飯やパン、麺、甘いものなど糖質を多く含む食品を空腹時に一気に食べると、食後血糖が大きく上昇する場合があります。
一方、食物繊維を含む野菜などを先に摂取する食べ方は、食後の糖代謝に影響を与える可能性が報告されています。
過去のA-CHILD研究でも、野菜を炭水化物より先に食べる食事順序について、食物繊維による消化速度などを介して食後血糖の上昇が小さくなる可能性が議論されています。
ただし、ここでさらに慎重に考える必要があります。
今回の「自己肯定感」の研究では、子どもたちの血糖値を継続的に測定したわけではありません。
したがって、
ベジファースト
→ 血糖値の乱高下が減少
→ 感情が安定
→ 自己肯定感が高くなる
という一連の流れは、現時点では非常に興味深い仮説ではありますが、今回の研究によって直接証明されたものではありません。
ここは、健康情報を発信する際には大切にしたい部分です。
仮説② 「身体の安定」が心の安定につながる可能性
私たちは、心と身体を別々に考えがちです。
しかし実際には、
睡眠不足の日にイライラする。
空腹になると集中できなくなる。
疲れていると小さな失敗でも落ち込む。
身体が元気な日は自然と前向きになれる。
このように、私たちの感情や行動は身体の状態から大きな影響を受けています。
特に成長期の子どもは、大人以上に生活リズム、睡眠、運動、食事などの影響を受けながら毎日を過ごしています。
だからこそ、
「心を強くしよう」
と心だけに働きかけるのではなく、
心が安定しやすい身体環境をつくる
という発想も大切なのではないでしょうか。
仮説③ 「自分で整える」という小さな習慣
今回の研究でもう一つ興味深いのは、「野菜そのもの」だけでなく、
毎日の食事で決まった行動を続ける
という点です。
「最初に野菜を食べる」
これは、とても小さな行動です。
しかし、小さな行動を毎日繰り返すことは、
「自分の身体にとって良い行動を選ぶ」
というセルフケアの習慣にもなります。
自分で選択する。
自分で行動する。
それを継続する。
そして、自分の身体の状態を感じる。
こうした小さな積み重ねが、自己調整能力や「自分はできる」という感覚と関連している可能性も考えられます。
もちろん、これも今回の研究だけで因果関係が証明されたわけではありません。
しかし「健康的な生活習慣」と「心の力」を切り離さず考えるという意味で、とても重要な視点だと思います。
自己肯定感が低い子に「自信を持って」は難しい
子どもの指導をしていると、
「自信がない」
「どうせできない」
「失敗したくない」
と感じている子に出会うことがあります。
そんなとき、大人はつい、
「もっと自信を持って」
「大丈夫だから」
「できるよ」
と声をかけたくなります。
もちろん、その言葉に救われる子もいます。
しかし、自己肯定感は言葉だけで作られるものではありません。
身体を動かしたら気持ちよかった。
昨日できなかった動きが今日はできた。
少しだけバランスが取れた。
自分で呼吸を整えたら落ち着いた。
食事をしたら身体が元気になった。
そんな身体を通した小さな成功体験も、「自分は大丈夫」という感覚を育てていく材料になるのではないでしょうか。
身体調律で考える「自己肯定感」
身体調律では、単に筋肉を強くすることだけを目的にしません。
呼吸、姿勢、感覚入力、バランス、運動、睡眠、栄養。
身体を取り巻くさまざまな要素を見ながら、
「その人自身が本来持っている力を発揮しやすい状態へ整える」
ことを考えます。
これはジュニアにも同じです。
運動が苦手な子に、さらに厳しい運動をさせる。
できない動きを何度も練習させる。
「頑張ればできる」と精神論で励ます。
それだけではなく、
なぜ動きにくいのか?
視覚や前庭感覚はどうか?
足裏からの感覚入力はどうか?
背骨や股関節は動いているか?
呼吸はどうか?
睡眠は取れているか?
そして、普段どんな食生活をしているのか?
そこまで広く考えていく。
心を変える前に、心が働きやすい身体をつくる。
これも身体調律の重要な考え方です。
「何を食べるか」から「どう食べるか」へ
子どもの食事というと、
「野菜をたくさん食べなさい」
「お菓子を減らしなさい」
「タンパク質を摂りなさい」
と、どうしても「何を食べるか」に意識が向きます。
しかし今回のA-CHILD研究が興味深いのは、
「何を食べるか」ではなく、「どの順番で食べるか」という非常に小さな習慣に着目したことです。
食生活を完璧に変える必要はありません。
食卓に野菜があるなら、
「今日はここから食べてみようか」
それくらいから始める。
子どもの身体づくりは、特別なことだけでできているわけではありません。
食事、睡眠、遊び、運動、呼吸。
毎日の小さな積み重ねによって、神経系も身体も少しずつ学習していきます。
心を育てることと、身体を育てることを分けない
自己肯定感という言葉を聞くと、私たちは心理的な問題として考えがちです。
しかし、
「心を育てること」と「身体を育てること」は、本当に別なのでしょうか。
身体を動かす。
しっかり食べる。
眠る。
呼吸する。
自分の身体の感覚に気づく。
そして、
「昨日より少しできた」
を積み重ねる。
今回の研究は、野菜から食べれば自己肯定感が上がる、と証明した研究ではありません。
それでも、約2,600人の子どもを6年間追跡し、野菜を最初に食べる習慣を継続した子どもほど、6年生時点で自己肯定感とレジリエンスが高かったという結果は、子どもの心と身体を考えるうえで非常に興味深いものです。
子どもに「自信を持ちなさい」と言う前に。
私たち大人にできることは、
その子が自分自身を信じやすくなる身体と生活の土台を、一緒につくっていくことなのかもしれません。
身体が整う。
動ける。
できる。
そして、自分を少し好きになる。
食事も運動も心も、すべてを別々に考えない。
それが、これからのジュニア世代に伝えていきたい「身体調律」の考え方です。
お子様の運動のお悩み
一度、ご相談ください。
グループトレーニングをしていません。
パーソナルのみで
枠もそんなに多く用意できませんが、5〜6名の小学生が
通っているピラティススタジオは
札幌でも少ないです。
参考研究
Khin YP, Nawa N, Koyama Y, Isumi A, Fujiwara T. Association between eating vegetables first at the meal and mental capital: A-CHILD study. Pediatric Research. Published March 2, 2026.
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