野菜を食べているから健康とは限らない。アスリートピラティスの現場から。
2026/08/28
「野菜を食べているから健康」とは限らない。
プロアスリートに起こるエネルギー不足と腎臓の話
「野菜中心の食生活にしています」
一般的には、とても健康的な言葉に聞こえます。
しかし、毎日何時間も身体を動かすプロアスリートの場合、少し話が変わります。
問題なのは野菜ではありません。
身体が必要としているエネルギー量に、食事が追いついているか。
ここが重要です。
野菜中心で起こりやすい「食べているのに足りない」
野菜には、ビタミン、ミネラル、食物繊維、抗酸化成分など、身体のコンディションを維持するために重要な栄養素が含まれています。
ですから、野菜を減らせばいいという話ではありません。
ところが野菜は一般的にエネルギー密度が低く、野菜中心の食事でお腹がいっぱいになってしまうと、
・ご飯、麺、芋類などの炭水化物
・肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質
・適量の脂質
まで十分に食べられないことがあります。
一般の人なら問題にならない食事量でも、毎日激しいトレーニングを行う選手には「足りない」ことが続くと起こることがあります。
<身体はエネルギーが足りなくなるとどうする?>
運動で大量のエネルギーを消費しているのに、食事から十分なエネルギーが入ってこない。
まず身体は、蓄えているグリコーゲンや脂肪などを利用します。
そして不足状態が長引けば、身体は筋タンパク質を維持しにくくなり、筋量や回復力、トレーニングへの適応にも影響が出てきます。
つまり、
「しっかり練習しているのに身体が小さくなってきた」
「疲労が抜けない」
「以前より力が出ない」
という選手では、トレーニングだけではなく「エネルギー不足」を疑う必要があります。
スポーツ医学では、運動による消費量に対して身体に残されるエネルギーが不足する状態を「低エネルギー利用可能性(LEA)」と呼びます。
これが長期間・重度になると、
REDs(Relative Energy Deficiency in Sport:スポーツにおける相対的エネルギー不足)
という状態につながる可能性があります。
REDsは女性だけ、マラソンランナーだけの問題ではありません。
男性アスリートにも起こります。
「筋肉が分解されると腎臓が炎症する」は少し違います
ここは、とても大切なところです。
エネルギー不足によって筋タンパク質の分解が増えたからといって、それだけで「腎炎になる」というわけではありません。
通常の代謝で生じた老廃物は、腎臓などを介して処理されています。
ですから、
エネルギー不足
↓
筋肉を分解
↓
腎臓が疲労
↓
腎炎
と単純につなげるのは医学的には正確ではありません。
ただし、アスリートには別の注意点があります。
激しい運動+脱水は腎臓へのリスクになる
長時間・高強度の運動では、
大量発汗
↓
脱水
↓
腎臓への血流低下
という状況が起こり得ます。
さらに非常に強い筋損傷が起こって「横紋筋融解症」という状態になると、筋細胞からミオグロビンなどが大量に血液中へ放出され、急性腎障害につながることがあります。
特に、
エネルギー不足+高強度トレーニング+暑熱環境+脱水+回復不足
が重なる選手は注意が必要です。
これは単なる「疲労」として片付けないことが大切です。
筋肉を守るために「たんぱく質だけ増やす」も違う。
筋肉が落ちている。
だったらプロテインを増やそう。
これも必ずしも正解ではありません。
選手の場合、まず確認したいのは総エネルギー量と炭水化物量です。
炭水化物は運動時の重要なエネルギー源です。
ご飯などを極端に減らしたまま、鶏胸肉やプロテインだけを増やしても、身体が十分なエネルギーを確保できていなければ理想的な状態とはいえません。
必要なのは、
「野菜+たんぱく質」ではなく、
「主食+主菜+副菜+脂質+水分」
を競技量に合わせて組み立てることです。
例えば、
ご飯
+鮭や肉
+卵
+納豆
+具沢山の味噌汁
+野菜
+果物
+必要に応じて乳製品や補食
といった組み合わせです。
野菜は「主役」というより、アスリートの身体を支える重要なチームメンバー。
そこに十分なエネルギー源を加えることが大切です。
「食べている量」ではなく「競技量に足りているか」
マラソンランナーや
プロ選手の場合、
「一般的に健康的な食事」
と
「競技を続けられる食事」
は必ずしも同じではありません。
たくさん野菜を食べている。
脂っこいものを避けている。
体重も増えていない。
一見、とても健康的です。
しかし、
疲れが取れない
体重が意図せず減る
筋量が落ちる
パワーが出ない
回復が遅い
怪我を繰り返す
風邪をひきやすくなる
といった変化があれば、「もっと身体を絞る」のではなく、
エネルギーが足りているかを一度見直す必要があります。
そして、尿量の著しい減少、濃い褐色尿、強い筋肉痛や筋力低下、むくみ、血液・尿検査の異常などがある場合は、食事だけで判断せず
医療機関での評価が必要です。
アスリートの身体は、練習だけで作られるものではありません。
食べることもトレーニング。
回復することもトレーニング。
身体を「軽くする」ことと、身体からエネルギーを「なくす」ことは違います。
競技力を高めたい選手ほど、
健康的に走りたいマラソン選手ほど、
動く量に見合ったエネルギーを入れること。
そこから身体づくりを考えていく必要があります。
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